![20190114n01](http://nba-lover.work/wp-content/uploads/2019/06/20190114n01-678x381.jpg)
インディアナ州イーストシカゴ出身。
1996年からヘッドコーチとしてサンアントニオ・スパーズを率い、5度の優勝に導いたリーグきっての名将。
グレッグ・ポポビッチ
2017年からはオリンピック代表監督も務めている。
愛称は”Pop”(ポップ)、70歳。
現在、10年以上続けて指揮をとっているヘッドコーチはポポヴィッチ以外に存在せず、2018-19シーズンもスパーズはプレーオフ進出を決めた。
これは22年連続となり歴代1位タイの記録である。
最優秀コーチ賞にも3度選ばれ殿堂入りはほぼ確実と言われる。
そんなポポビッチに迫ってみようと思います。
選手を家族と呼ぶ男、ティムダンカンとの絆
コーチとしてのポポヴィッチは非常に厳格として知られているのは有名でメディアに対するインタビューも多くは語らない。
最近のインタビューでは15秒で退席することもあったほどだ。
戦術の一つ一つを細かに指導し、気の抜けたプレイを見せればたとえそれがスター選手であってもすぐに交代を言い渡す。
ティム・ダンカン、言わずも知れたNBAのスパースター、彼はドラフト1巡目にスパーズに指名され、ポポヴィッチの厳しい指導の下、NBA優勝5回、シーズンMVP2回、オールスター選出15回、オールNBAファーストチーム選出10回を記録する選手に成長した。
ダンカンはポポヴィッチにゲーム中も練習中、サイドラインやロッカールーム長々と説教されていた。
これはチームのどの選手も平等で、誰ひとりとしてどの選手よりも特別優れているわけではないという錯覚をせぬようにポポヴィッチはあえて行っていたことだった。
ダンカンは引退セレモニーでポポヴィッチに対し
「僕に対して父親のようでいてくれて、ありがとう」
と言った、彼とポポヴィッチの間にはコーチと選手以上の絆があったのだ。
このポポヴィッチとダンカンのこの関係があってこそ、謙虚、共有、仲間のための犠牲やチームへの献身というスパーズの文化を発展させ、現在まで確立させることができたといっても過言ではない。
これといった戦略はとくにない、変わらないのは「美しいバスケットボール」
多くのコーチは同じ戦略を選手に当てはめてコーチングすることを好む。
フィル・ジャクソンのトライアングル、トム・シボドーのストロングサイドボックスディフェンス。
マイク・ダントーニの7秒のオフェンスなどが有名だ。
ポポヴィッチはプレーヤーを自身のシステムに当てはめるより、プレーヤーに合わせてシステムを設計する。
加えて、メンバーが戦術と自分の役割を理解して実行し、特定の選手の能力に依存しないというチームとしての戦術がしっかりしているといえる。
ボールムーブメントとオフボールムーブメントの基礎を高い水準で行い、チームメイトが決めてくれることを信じるという献身的なバランスのとれたチームプレーがスパーズに言われる
「美しいバスケットボール」
でなのである。
スパーズにおけるBIG3(ダンカン・ジノビリ・パーカー)は、そのうち誰もが絶対的エースとは言えない。
「美しいバスケットボール」
を体現でき、すべての項目において平均値以上のスキルを持ち、全員が得点の脅威であるところがポイントなのだ。
重要なタイムアウトで選手任せ!?
あまりメディアに対してあまり話すことのないポポヴィッチが,2014年の試合前のインタビューでタイムアウトの時の指示についてこんなこと語ったことがあった。
「タイムアウトでは、たまに私はこう話す。『私は何も言うことはない。私にどうしろと言うんだ?ボールを持っているのは君たちだ。ここにいる私に何を望むんだ?君たちが打開策を見出すんだ』」
と。
普通トップコーチであるなら、重要な場面でのタイムアウトではプレーを具体的に指示するはず。
しかしこうした彼の行動の裏には、彼の考えやチームの戦術を大いに理解している当時3人のベテラン(ダンカン、パーカー、ジノビリ)の存在や、プレーヤー自身に成功への責任を与えるという意図があったのだ。
この一見無責任にも見えるこの考え方は常にコーチの言動や指示に与えられるがままの受動的なプレーヤーではなく、自身で状況を判断して打開策を講じることのできる能動的なプレーヤーを育てることに繋がていたのかもしれない。
スパーズが常に強豪であり続けることの理由は、ドラフトにおける上位指名権が無くとも戦略的にプレーヤーを育てていくことにある。
新生スパーズ課題はまさかのディフェンス
2018-19シーズン開幕直後は特にディフェンスに問題を抱えているように見えた新生スパーズ。
シーズン前のトレードでディフェンスの要であったクワイレナード・ダニーグリーンを失った。
ディフェンスはポポヴィッチにとってクリアしていかなければならない課題であり、手腕が問われているのも確かだ。
今チームの状況を理解し、リーダーシップを取っている一人がラマ—カス・オルドリッチだろう。
彼はインタビューで
「プロセスを踏んで、チームがより良くなるために集中していかなければならない・・・言い訳するつもりはない。僕らはもっと良くなければいけない。でも、新しい方法を選手たちに教えて、自分やパティ(ミルズ)のようなこのチームに長くいる選手がチームを正しい場所に導くためにその役割を担う必要がある。」
と語る。
選手として自立し、ゲームの中だけでなく能動的にチームのために動けるベテランがコーチ陣をサポートしてくれる。
これもポポヴィッチの手腕のなかで生まれた賜物だろう。
ポポヴィッチは、2018-19年シーズン終了後に現在の契約を満了する。
気になるのは来シーズン以降もNBAで指揮を執り続けるかどうかだが、今のところ本人は未定であることを強調した。
チームの再構築を行う新生スパーズにとってもシーズン後の動きに注目だ。
もし彼がHCから退けば、長いNBA史においても、大きな節目になることは間違いない。
ポポヴィッチはスパイだったかもしれない!?
実はポポヴィッチ、海軍士官学校を卒業している。
在学中は諜報活動の訓練も受けていたらしい。
バスケットボールの指導者への道でなければ今頃、スパイへの道があったのかも、しれない。